お菓子の食べ尽くしが止まらない〜叱っても直らなかった息子が、自分で健康管理を始めるまで〜

買い置きしておいたお菓子の袋が、気づくと全部空になっている。

「明日のぶんも食べちゃったの?」と聞いても、本人はぽかんとしている。隠しても見つける。約束しても、また繰り返す。

発達がゆっくりな子の「食べ尽くし」に悩んでいる親御さんは、実はとても多いです。そして「何度言ったらわかるの」と言ってしまって、夜になって自己嫌悪……そんな毎日を過ごしていませんか。

うちの息子にも軽度知的障害があり、中学・高校のころは、家にあるお菓子を全部食べてしまう子でした。

この記事は「こうすれば直ります」という記事ではありません。叱っても直らなかった息子が、社会人になった今、誰に言われるでもなく自分で健康管理をするようになった——わが家に起きた、その変化の話です。

中高時代のわが家〜お菓子が消える〜

息子の食べ尽くしがいちばん激しかったのは、中学・高校のころでした。

家族みんなのために買っておいたお菓子が、全部なくなる。妹たちのぶんも、です。注意しても、そのときは神妙な顔をするけれど、また繰り返す。正直、困った状態でした。

「だらしないから」ではないことは、親としてわかっていました。でも、どうすれば止まるのかは、わかりませんでした。

なぜ「食べ尽くし」は叱っても直らないのか

発達がゆっくりな子の食べ尽くしには、いくつかの背景が重なっていることが多いです。

  • 「あとで」の見通しが立ちにくい:「明日のぶん」「みんなのぶん」という時間や配分のイメージが、目の前のお菓子より弱いのです。
  • 満腹や「もうやめよう」のブレーキが働きにくい:体の感覚をつかむのが苦手な子は、食べ過ぎのサインにも気づきにくいことがあります。
  • ストレスの出口になっている:学校で頑張ってきた子ほど、家で食べることが数少ない発散になっていることがあります。
  • そして何より——やめる理由が、本人の中にない。「怒られるから」は、本人の理由ではなく親の理由なんですよね。

つまり食べ尽くしは、しつけの失敗でも、親の育て方のせいでもありません。叱って直るものなら、とっくに直っているはずです。

社会人になった息子に起きた変化

その息子が、この春から社会人として働いています。そして今、こうなっています。

  • 甘いものを、ほとんど口にしなくなった
  • 栄養バランスを気にするようになった
  • 体を作るために、自分から週1〜2回ジムに通う。プロテインも飲む
  • 「仕事中に眠くなると困るから」と、寝る時間・起きる時間を自分で管理している

あの食べ尽くしの日々を知っている親からすると、別人のようです。

きっかけは、しつけでも、私の声かけでもありませんでした。サッカーです。

息子は社会人になってから、大好きなサッカーの選手に憧れて、自分でトレーニングを始めました。「あんな体になりたい」という目的ができた瞬間、お菓子は「我慢するもの」ではなく「自分の目的のじゃまになるもの」に変わったのです。

親が何年言っても動かなかったブレーキが、本人の「なりたい」で一気にかかった。やめる理由が、初めて本人のものになったからだと思っています。

いま食べ尽くしに悩んでいるご家庭でできること

「じゃあ、目的ができるまで待つしかないの?」と思いますよね。待つだけではなく、今できることが3つあります。

  • ①「やめさせる」より「環境を整える」:買い置きの量を減らす、1回ぶんずつ小分けにする、「これは食べていいお菓子」の置き場所を作る。本人の意志と戦うのではなく、そもそも戦いが起きにくい環境にして、今をしのぎます。
  • ②食べてしまっても、人格を責めない:「また食べたの!」で止まらないのは経験済みのはず。責められ続けた子は、隠れて食べるようになるだけです。「全部食べたくなっちゃったんだね。次はここのぶんだけにしよう」と、事実の確認と次の約束にとどめます。
  • ③その子の「好き」を、じゃましないで育てておく:うちの場合、ブレーキになったのはサッカーでした。今どんなに関係なさそうに見えても、子どもが夢中になっているものは、いつか自己管理のエンジンになる可能性があります。「そんなことより」と言いたくなる日も、好きなものだけは取り上げないであげてください。

なお、体重の増え方が心配なときや、食べ方が極端で気になるときは、家庭だけで抱えず、かかりつけ医や発達の相談先に一度相談してみてください。

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食べ尽くしが激しくなりやすい中高生の時期は、体も心も大きく変わる時期と重なります。思春期ならではの関わり方の距離感は、1冊手元にあると迷ったときに戻れる場所になります。

気をつけたい関わり方

  • 罰として好きなものを取り上げる:食べ尽くしは減らず、親子関係だけが削れていきます。しかも「好き」は、将来その子を変えるエンジンの種です。
  • 「だらしない」「意地汚い」と人格に結びつける:行動と人格は別です。本人に届くのは言葉の内容より「自分はダメなんだ」という感覚のほうです。
  • 「社会人になれば自然に直る」と期待して何もしない:うちは結果的に変わりましたが、それは「好き」が育っていたからだと思っています。環境調整と、好きを守ること。この2つは今日からの仕事です。

毎日の食事まわりの困りごとには、こちらの記事もどうぞ。

今日からできる小さな一歩

  • お菓子の買い置きを、いつもの半分にしてみる
  • 「食べていいお菓子の置き場所」を1か所だけ作る
  • お子さんがいま夢中になっているものを、ひとつ思い浮かべて「それだけは取り上げない」と決める

食べ尽くしは、しつけの失敗ではありません。叱って直らないのは、やめる理由がまだ本人のものになっていないから。

うちの息子の場合、その理由は「好きなサッカー」が連れてきてくれました。何年もかかりましたが、子どもの中のエンジンは、ちゃんと眠っています。今日も戦いにならない環境づくりをしながら、その日を一緒に待ちましょう。

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